多様性(ダイバーシティ)は、ビジネスの世界においても、革新的な思考、持続可能な成長、そして競争力の向上に不可欠な要素です。
このブログでは、企業が多様性を組織文化の核としてどのように統合し、それを通じてどのように強いチームを築くことができるのかについて解説していきたいと思います。
1.多様性(ダイバーシティ)とは?
多様性(ダイバーシティ)とは、従業員の人種、民族、性別、性的指向、年齢、身体的特徴、信条、経済的背景など、多岐にわたる特性を認識し、価値を見出し、尊重することです。
これらの違いを受け入れることで、企業はより幅広い視点を得て、創造性を促し、チームの協働を強化することができます。
また、多様性が深く組み込まれた組織は、変化する市場の要求に迅速に対応し、顧客のニーズをより深く理解することが可能となります。
著書「多様性の科学」では、多様性を2つに分けて解説をしています。
一つ目は、「人口統計学的多様性」と言われるものです。
こちらは、人種、民族、性別、年齢など比較的理解がしやすい多様性を指します。
一方二つ目は、「認知的多様性」と言われ、それぞれの人が持つ物事の見方や考え方を指します。
この「認知的多様性」は、「人口統計的多様性」に影響を受ける部分はあるものの、必ずしも一致しないもので、人が違えば「認知」が異なるということです。
2.なぜ画一的集団は弱体化してしまうのか
画一的な集団が失敗した事例として、しばしば引き合いに出されるのが、米国の自動車会社「ゼネラル・モーターズ(GM)」の事例です。
20世紀の大半を通じて、GMは自動車業界での支配的な地位を保っていましたが、21世紀に入ると、その地位は急速に低下しました。
この失敗には複数の要因が関係していますが、組織内の多様性の欠如が大きな役割を果たしたと考えられています。
ゼネラル・モーターズの事例
1. 多様性の欠如
意思決定の同質性:GMの経営陣は長年にわたり、似たような背景を持つ人々で構成されており、新しいアイデアや異なる視点が不足していました。このような同質性は、創造性や革新の抑制につながり、競争上の不利益をもたらしました。
2. 市場の変化への適応不足
消費者のニーズの見落とし:GMは大型で燃料消費率の悪い車種の生産に重点を置き続け、燃料効率の良い車や革新的なデザインを求める市場の動向を見落としていました。これは、集団内での多様な意見や視点が不足していたため、市場の変化に対する感度が鈍かったことに起因します。
3. 経済危機と破綻
2008年の経済危機:2008年の経済危機時、GMは財政難に陥り、最終的にはアメリカ政府からの救済を受けることになりました。この危機は、GMが過去の成功モデルに依存し続け、市場や経済環境の変化に対応するための多様性と柔軟性が不足していたことが一因とされています。
ゼネラル・モーターズの事例からもわかるように、組織内の多様性が新しいアイデア、創造性、そして市場の変化への適応能力を促進する重要な要素であるということです。
多様性が不足していると、組織は固定観念に囚われ、競争力を失うリスクが高まります。
組織が長期的な成功を維持するためには、異なるバックグラウンド、スキルセット、視点を持つ人々を含めることで、より幅広い視野を持ち、柔軟な対応が可能になることが重要です。
3.「多様性の科学」が解説するクローン集団と賢い集団(反逆者の集団)の違い
著書「多様性の科学」が解説する”クローン集団”と”賢い集団”というものがあります。
下記の図の長方形は、「問題空間」と呼ばれ、概念や知識を表す領域であり、問題解決のための知識や経験、視点が詰まっています。
その中に賢い個人が入った場合以下のようになります。
シンプルな問題空間であれば、賢い個人で解決ができるかもしれません。
一方、”クローン集団”というのは、以下のような図で表されます。
一人ひとりが優秀であっても同じような視点や考え方、スキルを持っている画一的な集団の場合、問題解決ができる範囲というのはとても限定的になります。
では、”賢い集団”とはどのような集団なのでしょうか?
図のように、賢い個人それぞれが異なる視点や考え方、スキル・知識を持っている集団がちゃんと問題空間の中で散らばっている集団のことを”賢い集団”と呼んでいます。
つまり、多様性があるチームというのは、問題解決のために賢い個人が持つ特性=違いを活かしあって、幅広い活動が行えるということです。
4. 支配的リーダーが持つ影響力と画一化
プロジェクトチームの中に、支配的リーダーが存在すると失敗することが多くあります。
そのことについても「多様性の科学」で解説されています。
もとは、賢い集団だったにも関わらず、支配的リーダーの影響力によって、クローン集団へと変わってしまうから、チームを失敗へと導いてしまうのです。
賢い個人が持つ特異性を活かすためには、リーダーとしての影響力を考慮しながらチームを率いていく必要があります。
5. チームに多様性を取り込む3つの方法
では、どうすればチームが持つ個人の特異性(多様性)を活かすことができるのでしょうか。
ここではチームに多様性を取り込むための3つの方法について解説します。
1.無意識のバイアスを取り除く
自分にどのようなバイアス(偏見)があるのか?を客観視し、事実の本質を見る努力をすること
2.多様性な人材とのネットワーキングを築く
自分たちのチームだけでは補えない視点や考え方、スキル、知識を持った賢い個人とのネットワーキングを広げること
3.Givingの精神をチームに広める
賢い個人が自分が保有する特異性をチームや社会のためにGive(貢献)する喜びを持つことで、協働による効果を高めること
チームに多様性を取り込むためには、まずは各個人がそれぞれ内在的に持っている無意識のバイアスに気付き、チームの特異性を高めるためにネットワークを広げ、その特異性をチームのため、社会のために使いたいと思えるチームを作ることが大事だということです。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか?
日本でもダイバーシティの重要性について話し合われるようになって10年近く経ちますが、やはり多様性のあるチームや会社は永続的な成長をし続けるのだと思います。
それは、人口統計学的な多様性だけではなく、認知的多様性にも目を向けて、一人ひとりの強みを活かし合うことで実現されるのではないでしょうか?
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この記事を書いた人
納土 哲也
岐阜県飛騨高山市生まれ。
人財育成・組織開発のコンサルタントとして、100社以上の企業の人財育成・教育体系の構築を手がける。2014年にチームビルディング事業の事業責任者として立ち上げに従事。
2018年に本場のチームビルディングを学ぶため、オーストラリアへ単身留学。現地のチームビルディング企業で、ゲーミフィケーションをベースとしたチームビルディングメソッドを学び、2019年に帰国。2021年に株式会社Teamieを創業。