チームビルディングはチームの生産性を高めるためにとても重要なアプローチです。ただし、やみくもにチームビルディングをしようとしても時間と労力がかかってしまったり、逆に関係性が悪化してしまったりするケースもあります。
この記事では、チームビルディングを行う際に有効なフレームワークを用いて、チームビルディングのステップを解説していきます。
1.チームビルディングとは?
チームビルディング(Team Building)とは、名前の如くチーム(Team)をビルド(Build)することで、具体的には、チームの関係性を深めたり、お互いのことを深く知ることで”チーム”としてより機能する状態にすることを指します。
新しくチームが立ち上がった時や、新しい人が配属された時、また新入社員の同期との絆を深める際にチームビルディングを行う企業が近年増えてきています。
2.チームビルディングに必要な要素とは?
ここでは、Q12やストレングスファインダーで有名な米国の調査会社、ギャラップ社が提唱している生産性の高いチームの要素、”5C”について解説をしていきたいと思います。
下記の5つのCを実践しているチームの生産性が実践していないチームと比較して圧倒的に高いという調査結果が発表されました。
①Common Purpose
②Connection
③Communication
④Collaboration
⑤Celebration
①Common Purpose(共通のゴール)
5つのCの中で、何よりも始めに実践すべきCが、このCommon Purpose(共通のゴールを明確にすること)です。自分たちのチームが一体何を目指していて、それが社会や会社にどのような影響を与えるのかについて明確になっていることが重要です。
近年においては、これまで主流だったMission(ミッション)より、Purpose(パーパス)というワードを使う企業やチームも増えてきました。それぞれ意味合いが企業やチームによって異なるため、一概には言えませんが、Mission(ミッション)は、自分たちのチームが向かう方向性を示すものである一方、Purpose(パーパス)は、それを実現することで社会にどのような価値があるのか?までが含まれているものだと解説されています。
Common Purposeは、チームに所属するメンバーが、チームがどこに向かい、どのような社会的な価値を生み出すのか?ということを示してくれるとても重要な要素と言えるでしょう。
②Connection(共通目的とのつながり)
ここで言うConnectionは、Common Purpose(共通の目的)との”つながり”を指しています。Common Purposeは描いただけでは、何の意味も持ちません。よくある事例として、経営理念やビジョンを明記しただけで、その会社で働く従業員はあまり意味や意義を理解しておらず、共感もされていないという状態があります。
それと同じくCommon Purposeが存在するだけでは何の意味ももたず、そのCommon Puposeにメンバーが共感をし、誇りに感じながら、その共通目的に向かうモチベーションが高い状態がConnectionされている状態となります。
③Communication(コミュニケーション)
Communicationは、シンプルに有機的にコミュニケーションが取れているかどうか、ということです。チームにおいて、Communicationが重要性なのは言わずもがなだと思います。
ただ、Communicationには、2つの側面があります。量的なコミュニケーションと質的なコミュニケーションです。只、コミュニケーションをたくさん取れているチームが良いかと言われれば、必ずしもそうではありません。
質にもこだわったコミュニケーションが取れているかどうかもチームの生産性に影響を与えます。良質なコミュニケーションとは、「目的が明確で、それが達成されるコミュニケーション」と言えます。
日常の会議を想像すれば、分かりやすいと思います。
良質なコミュニケーションが取れている会議というのは、アジェンダが明確で、会議のテーマに沿って参加者が自由闊達に意見を出し合い、明確なアウトプットが出され、目的が達成されます。
一方、量的なコミュニケーションにこだわってしまうと”無駄な”会議ばかりが増えて、参加者の時間とモチベーションばかりが削がれてしまいます。
だからこそ、質と量の両方にこだわったコミュニケーションを”デザイン”していくことが重要となることでしょう。
④Collaboration
Collaborationは、チームに協力し合う姿勢があるかどうかということです。Communicationさえ取れていれば、協力しあえているというわけではなく、チームメンバーの状況を理解し、自分の時間や能力、専門性などを出し惜しみすることなく、提供しあえていることが協力が出来ている状態と言えるでしょう。
意外とこのCollaborationが難しいと言われています。それは、立場の違いからくる価値観や視点の違いが引き起こすコンフリクト(対立・衝突)が原因とされています。
例えば、営業は「売りたい、わかりやすい商品が欲しい」と考え、開発は「まだ、世界にないものを
作りたい」と考えたとします。開発が長期間をかけてつくった自信のある新商品を営業メンバーに説明をしにいきます。その説明を受けた営業メンバーは「こんなわかりにくいものを長期間かけてつくったのか?!開発メンバーはお客様のことを理解していない!」といった感じで不満が出ます。開発メンバーも「コモディティ化された商品を売っていても未来はないじゃないか!」と憤慨します。このような対立を乗り越えることがCollaborationにおいて重要なのですが、その対立を乗り越えるのは容易くありません。
だからこそ、Collaborationは”意図的に”起こさないと実現はされづらいとされています。
⑤Celebration(称賛・承認)
そして、最後は、Celebration(称賛・承認)です。最も日本人が苦手とされているのがこのCelebrationです。
以前より行ってきた管理職研修の中で、「最近誰かを褒めたことがありますか?」という質問に自信を持って手を挙げられる人は、どこの企業でも多くて2-3割ぐらいでした。また、「最近誰かに褒められましたか?」という質問には、1割未満とより割合が下がります。
なぜ褒めないのか?という理由には、「そもそも褒められたことが少ない」ことや「やって当たり前だと思っている」ことがよく挙げられます。
しかし、褒める=称賛・承認することは、チームにとって絶大な効果をもたらします。褒められたことでモチベーションが上がるのはもちろんのこと、自分の新しい側面を発見させてくれる自己理解を促進させてくれるのです。
大小関わらず何かを成し遂げた時に、周囲から褒められることによって、「自分にはこういう側面を持っていたんだ!」とか、「こういうことがチームの役に立てるんだ!」という発見ができ、新しい貢献への意欲が湧いてきます。
5Cのまとめ
このように5Cは、チームの生産性を高める上で、どこまで出来ていて、どこを強化する必要があるかを客観視することができるフレームワークとなっています。
このようなフレームワークを通じて、チームメンバーが考える現状について議論してみてはいかがでしょうか?
3.チームの状態は4段階で分けられる?タックマンモデルから紐解くチームビルディングのすすめ
これまで生産性の高いチームをつくるために必要な5つの要素「5C」について解説してきました。
ここでは、時系列でチーム状態を知るためのフレームワーク、タックマンモデルについて解説したいと思います。
タックマンモデルとは?
タックマンモデルとは、4つの段階を経て、チームを成長に導くことができると言われています。その4つの段階とは、「形成期(Form)」「混乱期(Storm)」「統一期(Norm)」「機能期(Perform)」です。
①形成期(Form)
形成期とは、チームが形成されたばかりの時期を指します。新しいチームが立ち上がった瞬間が形成期となります。形成期は、人の集合体の状態で、不安や緊張が見られます。お互いの人柄もわからず、本音も出しづらい状況になります。
形成期から何もせずチームが動き出してしまうと、コミュニケーションも取りづらく、チームとして機能することが難しくなります。
②混乱期(Storm)
混乱期とは、”意図的”にチームメンバー同士が意見や主張をぶつけあっている状態です。タックマンモデルが注目される大きな要素としてこの混乱期の重要性を説いていることにあります。
チームを機能させるためには、この混乱期を避けていては実現できません。
対立や衝突は一見悪いものとされがちですが、ここの混乱期では、対立や衝突を通じて、お互いの意見や主張を理解することで、チームを次のステージにレベルアップさせてくれます。
③統一期(Norm)
混乱期を乗り越えることで、チームの規範や適材適所による役割が見えてきます。それが統一期です。お互いが考えていることを理解できたことで、共通の価値観や、チームが目指すべきゴールが見えてきます。またお互いのことを理解しあえたことで、適材適所による役割分担を可能となります。
恐れず混乱期を乗り越えたチームが本当の意味での統一が図れるようになります。
④機能期(Perform)
形成期から混乱期、混乱期から統一期を経験してきたチームは高いパフォーマンスを発揮することができるようになります。その経験がチームとしての成功体験を生み出し、自信となって、チームメンバーが自律して行動が取れるようになります。
タックマンモデルまとめ
タックマンモデルによると、やはり「混乱期」で起こる痛みを避けずに、乗り越えていくことが重要だということがわかります。混乱期を乗り越えてきたチームだからこそ、信頼関係が生まれ、生産性の高いチームが作られていきます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか?やみくもにチームをよくしようとしてもなかなか上手くいきません。5Cやタックマンモデルのようなフレームワークを活用することで、自分たちのチームの状況を客観視することができ、改善することをサポートしてくれます。
そして何よりも大事なことは、チームメンバーが自分たちのチームをどのように捉えているかを理解するためにも、これらのフレームワークで議論してみることがチームビルディングにおいてとても重要になることでしょう。
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この記事を書いた人
納土 哲也
岐阜県飛騨高山市生まれ。
人財育成・組織開発のコンサルタントとして、100社以上の企業の人財育成・教育体系の構築を手がける。2014年にチームビルディング事業の事業責任者として立ち上げに従事。
2018年に本場のチームビルディングを学ぶため、オーストラリアへ単身留学。現地のチームビルディング企業で、ゲーミフィケーションをベースとしたチームビルディングメソッドを学び、2019年に帰国。2021年に株式会社Teamieを創業。